こんにちは、たまぶろぐです。
今回は具体的な相続分についてご紹介します。
相続人が実際に受け取ることができる財産はどのように決められるのでしょうか。
また、親から生前に土地や多額の財産を贈与されていた場合や親と一緒の事業を営んでいた場合、親の介護を献身的に行っていた場合などは考慮される相続をすることは可能なのでしょうか。
そういった疑問についても説明していきます。
具体的相続分の意義
被相続人から遺贈を受けたり、生前に婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者がいた場合に、相続開始時の財産に、この遺贈や贈与などの特別な受益を加算して算定されます。
また、被相続人の事業に関して労務を提供したり、療養看護その他の方法により、財産の維持または増加に寄与した者がいた場合には、これらの寄与を考慮して具体的相続分を算定します。
具体的相続分の算定
具体的相続分の算定は、特別受益となる財産を確定することから始まります。
特別受益の内容
1遺贈
常に特別受益となります。
2生前贈与
婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本としてなされた贈与は特別受益となります。
- 婚姻・養子縁組のための贈与
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持参金や支度金のことで、通常の結納金や挙式費用は含まれません。
- 生計の資本としての贈与
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独立資金、居宅や農地の贈与などの生計の基礎に役立つものとなります。 親が子に対して、3年間、月10万円未満の送金を行っていた場合などは親の扶養義務の範囲内とされて贈与にはあたらないとされています。
3高等教育費用・留学資金
被相続人の社会的地位などに照らして相当の範囲内のものであれば、生計の資本としての特別受益にあたらないとされています。
子どもの個人差等によって、その費用に差があっても(公立私立の違い等)特別受益にはあたらないとされています。
4債務の支払い
被相続人が相続人の連帯保証人や身元保証人になっていて、多額の債務を支払い、求償していない場合は、相続分の前渡しとして生前贈与にあたるとされています。
5土地・建物の無償使用による利益
被相続人の土地に相続人の1人が無償で土地を利用していた場合では、被相続人と同居していて献身的な介護を行っていたなどの事情で変わってきます。
そのため、個別具体的な事情によって、画一的な判断はできないと考えられています。
6生命保険金
生命保険金は受取人として指定された者が、保険契約上の固有の権利として取得するもので、原則相続財産ではありません。
ただし、受取人である相続人とその他の相続人との間に生じる不公平が、著しいものであると評価すべく特段の事情がある場合には特別利益に準ずるとされています。
7死亡退職金などの遺族給付
法律や会社の内規・就業規則で定められた受給権者が、固有の権利として取得するものです。
これについても生命保険金と同様、その他の相続人との間に生じる不公平が、著しいものであると評価すべく特段の事情がある場合には特別利益に準ずるとされています。
特別受益の評価時期
特別受益とされた財産の評価は、相続開始時の価額で行われます。
持戻しの免除
被相続人の意思によって、生前の贈与については相続財産に加算せず、また贈与・遺贈の額を具体的相続分から控除しないことを持戻しの免除といいます。
相続人間の公平と被相続人が特別な取り分を与えようとしている意思の調整手段として認められた制度です。
ただし遺留分が侵害された場合、相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。
寄与分
寄与分制度の意義
被相続人が農業や自営業を子や配偶者と共に財産を築き上げた場合、高齢で病気になった被相続人を子が介護したために財産を消費しなくてすんだ場合などにおいて、民法の原則では子や配偶者の法定相続分が増える制度にはなっていません。
こういった場合では、遺言や遺産分割の際に配慮することで補っていました。
しかし実際には、遺言が無かったり、遺産分割の際に考慮に入れてもらえないことが多いのが現状です。
そこで被相続人の財産形成・維持に貢献した者に対して、相続人間の公平を図るため、寄与分を認めています。
寄与分を定める手続き
共同相続人の中に被相続人の財産形成・維持に貢献した者がいた場合、まずは協議の中で寄与分を定めます。
その協議がまとまらなかった場合、寄与した者の請求により家裁が寄与分を定めます。
寄与分の要件
寄与した者とは
寄与分は原則相続人のみが対象となるとされていましたが、法改正もあり、相続人でない親族も特別寄与者として認められました。
特別の寄与
2018年7月の法改正により、特別の寄与制度が導入されました。(民法1050条)
被相続人の財産形成・維持に貢献した被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対して、特別寄与者の寄与の額に応じた金銭(特別寄与料)を請求することができると規定されています。
寄与の内容
- 被相続人の事業に関して労務の提供または資金援助を行った場合
- 被相続人の療養看護
が典型例です。
ただし、通常の夫婦の協力扶助義務のものでは、寄与にはあたりません。
親子や親族の扶養義務も同様です。
1の例としては被相続人の家業を長年手伝っていたのに、給料が小遣い程度や他と比べても少ない場合などです。
2では、被相続人の入院の世話をし、退院後は通院の付き添いをし、入浴の世話や食事の介護を13年間行い、介護に多くの時間と労力を費やした場合などです。
※現状、介護保険制度が導入されたこともあり、寄与分が認められる療養看護の基準はかなり厳しいものになっています。
まとめ
今回はどのような財産が具体的に相続されるのかについてご紹介しました。
特に寄与分や特別の寄与といった制度は比較的新たにできた制度でもあるので、遺産分割協議の場でも、これを配慮し、進めていくことも必要になってくると思われます。